ネットのお作法
高橋尚子

1.はじめに

 気軽に使えて便利なインターネットや電子メール。

 インターネットを利用するときは、接続したネットワークの先に、世界中に広がる他のネットワークとその利用者がいることを忘れてはいけません。そこで快適に利用するためには、自分が人間であること、相手も人間であること、そして互いを尊重しあうことが基本です。ここでは、インターネットを利用するときに、心得ておくべきこと、基本的なルールを整理しました。

1-1.ネチケットの基本ルール

◆お互いが人間であることを忘れない

 無人島でたった一人、どこにもつなげていないならコンピュータをどのように利用しても、そこに何を作成しても、それは勝手にできます。

 しかし、現実の社会生活、コンピュータをネットワークに接続し、情報やサービスを提供したり利用したりするときは、勝手なことはできません。また、ネットワークを利用することで、たくさんの人と出会います。これまでの生活で出会うはずがないような人とも知り合うことができます。

 コンピュータに向かうと、目の前には画面しかありません。しかし、その向こうには、人間がいることを忘れてはいけません。さらに、ネットワークというメディアを介することで、非人間的な物のような感覚に陥ることがあります。ついつい、違う自分になったり、普段の社会生活ではしないような言動をとることがあります。

 自分が他人にされてイヤだと感じることは、すべきではありません。

◆相手の時間を尊重する

 電子メールやインターネットは、24時間365日いつでもメッセージや情報を発信することができます。そして、相手も、自由な時間にメッセージや情報を受け取ります。

 しかし、現代の社会では、大量の情報を受け取り、取捨選択し、必要なものを保存しなくてはいけません。以前よりも情報を整理する時間が増えています。生活そのものは、数十年前より道具や機械が開発され便利になり、さまざまなサービスを受けられるにもかかわらずです。なぜか、現代人は、労働時間が増え、人との付き合いが増え、睡眠時間が減り、どんどん自由時間が減っています。

 自分が発信した電子メールやメーリングリストに書き込んだ内容は、それを読んだ人の時間を費やしています。読んだ人の費やした時間が無駄にならないようにするのは、発信者の責任です。

◆利用は自己責任である

 インターネットや電子メールのメッセージや情報は、直接、相手に届きます。インターネットを利用して情報を受信したり発信するときには、それによって生じるリスクや社会的責任や法的責任を自分自身が負わなければなりません。

 地域や会社、学校から発行された利用者IDを使用していても、発信したメッセージや情報は、所属する機関とは関係なく個人の責任となります。

◆社会生活同様にルールを守る

 現在の多くの人は、生まれたときから、法律を遵守するように教育を受け、それに従って生活しています。ところが、インターネットをはじめとするコンピュータ・ネットワークの世界においては、法律は無いか適用されないと思っている、捕まる可能性は低い、などと勝手に思いこんでいる人がいます。さらに、コンピュータの向こう側にも人がいるのを忘れ、顔が見えないから、現実の社会生活よりも低いレベルの倫理基準や行動様式でも受け入れられると思っている人もいます。

 コンピュータ・ネットワークの世界でも、法律はありますし、適用もされます。違反すれば、逮捕もされます。つまり、その法律を破ることは、違反者です。

◆文字によるコミュニケーションが中心である

 インターネットや電子メールでは、文字によるコミュニケーションが中心で、文字が大きな役割を果します。したがって、ちょっとした言葉の違いや表現が誤解を招いたり、相手を傷つけたり、争いの種になることがあります。メッセージや情報を発信するときは、言葉を選んで、誤解を与えないよう、相手を傷つけることがないように心がけます。

 キーボードとディスプレイを使ってコミュニケーションをしているときは、自分が伝えたい意味を相手に理解させようとしても、顔の表情や動作、声の調子を変えることができません。ましてや、リアルタイムで、相手の反応を見たり、確認することができません。コミュニケーションの手段は、書かれている文字だけです。それは、自分だけでなく、相手にとっても同じことです。相手が理解できるようなメッセージを作成します。

◆自分の立場を把握する

 ネットワークの中がいつも厳しいルールに拘束されているわけではありません。自分が参加している場所と立場によってルールやマナーも異なります。つまり、自分がどんな場所でどんな立場であるかを知るのがかぎになります。

 目的がはっきりしているメーリングリストや会議室に参加するときでも、全く知らない掲示板などに参加するときでも、とりあえず最初は、書き込む前に、よく観察することです。流れてくるメーリングリストを読んで、誰がいるのか、交わされる用語や言葉のレベル、挨拶などの作法、どのくらい脱線できるかなどを把握します。

 会議室やチャットであれば、その様子を見て、過去に書かれたものを読みます。そこに前から参加している人たちがどういう話し方や論理を展開しているのかを見て、全体の雰囲気がつかめたら参加します。

◆自分が発信したものはどこかに残る

 電子メールやグループウェアなど、コンピュータとネットワークを利用するディジタル化された世界での通信は、どこかに必ず、書き込んだメッセージが残されるということです。これは、一度ディジタル化したデータをネットワークに流してしまったら、世界中の自分の知らない手の届かないどこかへ広がり、保存される可能性があるのです。電子メールであれば、メッセージが経由されたゲートウェイコンピュータやサーバーやそのバックアップに残されたり、途中で誰かが取り込んでいるかもしれません。

 つまり、自分が書いたメッセージが、独り歩きをして、誰かに迷惑をかけたり、誰かを傷つけたり、また戻ってきて、取り返しがつかなくなる可能性があるということです。

 メッセージを発信するときは、その発言内容に充分気を配ります。

1-2.電子メールの基礎知識

 電子メールは、ハガキや開封した封書と同じレベルです。

 電子メールでは、ハガキよりたくさん書けて、あまり大きくないファイルであれば添付して送信することができます。しかし、セキュリティや信頼性は高くありません。つまり、秘密はほとんど守られないのです。たくさんのネットワークを経由して届けられることから、配達の途中で紛失したり覗かれたりする危険があります。

◆電子メールの特徴

 電子メールは、ネットワークに接続されたコンピュータを介してメッセージをやり取りする仕組みです。現代の社会生活では、ビジネスツールとして欠かせないものとなっています。 まず、送信する側は都合のよいときに送ることができ、受信する側も好きなときに読むことができます。つまり、音声電話のように相手が出なければ、用件を伝えられないという不便さがありません。あえて言うならば、留守電のような機能です。

 また、同時に何人にも送れますし、文字だけでなく画像や音声、コンピュータのプログラムなども送ることができます。

 ただし、電話と違うところは、直接つながっているのではなく、ネットワークで接続されたコンピュータによって、バケツリレー方式で順に送り、メッセージを相手に届けるという仕組みです。メッセージを伝達するコンピュータは、通過するメールが来たら「貯めないで次へ渡す」という約束にしたがって伝達していきます。ですから、メッセージが到着するまでどのくらいかかるか、相手がいつ読むか、相手が返事をくれるかどうか、といったことは不明です。基本的な扱い方は、手紙と同じです。

◆電子メールの基本ルール

 電子メールは、手紙と異なりすぐに配達されるので、会話をしているように楽しむことができます。しかし、会話とは異なり、顔の表情や声の調子が一緒に伝わるわけではありません。つまり、メッセージが相手にどのように受け取られるかわかりません。基本的には、手紙の文章と同じように心遣いが大切です。伝えたいことを明確に記載し、言葉をよく選び、誤解や失礼のないように気を配ることです。これができるようになると、電子メールでのコミュニケーションがより快適になります。

 また、よく言われることですが、相手に対して常に寛容であるよう心がけ、人を不愉快にさせるような話や言葉遣いは慎みましょう。

◆他のコミュニケーションツールとの違い(表)

 長所短所
電話(声の通話)急用のときにすぐに連絡がとれる
相手が不在のときがある
リアルタイムで意志の疎通ができる
相手の邪魔をする可能性がある
伝えることを考える時間がない
メモを取らないと内容が残らない
FAX(ファクシミリ)用件が文書として残る
受け取る時間を選ばない
伝えることをまとめられる
機械(FAX)が必要
機械のあるところに受け取りにいかなくてはいけない
相手が見たかどうかは確認できない
文書を再利用するのが難しい
郵便用件が文書として残る
受け取る時間を選ばない
伝えることをまとめられる
伝わるのに時間がかかる
郵便受けを見に行かなくてはいけない
相手が見たかどうかは確認できない
文書を再利用するのが難しい
電子メール 用件が文書として残る
受け取る時間・場所を選ばない
伝えることをまとめられる
すぐに送れる
文書を再利用できる
機器(パソコン)が必要
ネットワークに接続しないと確認できない
相手が見たかどうかは確認できない
たくさん来てしまうかもしれない

1-3.電子掲示板、電子会議室、メーリングリストの基礎知識

 インターネットには、電子掲示板、電子会議室、ニュースグループ、メーリングリストなど、意見交換を行う場所がたくさんあります。操作方法やシステムは少しずつ異なるものの、基本的には、同じ問題意識を共有する多数の人と意見を交換することが目的です。

 これらの場所では、特に、ルールやマナーに気をつけ、参加者に対する思いやりを忘れないことです。自己中心的な発言やわがままな言動は、参加者に迷惑をかけるだけでなく、その管理者や運用している人達にも迷惑をかけます。参加者も、管理者と同じ気持ちで、これらの場所を運営し、勝手なことは避けるようにします。

 また、「チャット」は、リアルタイムで行われる井戸端会議のような場所です。電子掲示板や会議室などと異なり、リアルタイムにやり取りが行われますので、余計に、ルールやマナーに気をつけ、相手に対する思いやりを忘れないことです。

◆意見交換の基本ルール

 電子掲示板・電子会議室・ニュースグループなどは、特定の人や個人とやり取りする電子メールとは異なり、不特定多数の参加者に発言する場所です。メーリングリストも、限られたメンバーだけのメール交換だけではなく、多数の人が出入りするものもあります。多くの参加者が発言された内容を読みます。表現や発言内容に傷ついたり、指摘をしたりする人もいます。逆に、自分も傷ついたり、落ち込みます。

 したがって、発言するときは、言葉使いや用語を選び、表現には注意します。当然ですが、社会生活で許されない言葉や表現は、インターネット上でも許されません。

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